2024年度与党税制大綱「EVの生産に税額控除」
2024年度の与党税制大綱が決定されました。
その中で気になるニュースが。
「EVの生産に10年間の税額控除」です。
今回、EV(電気自動車)は半導体などと共に、国内で安定的に生産するのが望ましい戦略物資として、税制優遇が受けられることになりました。
これまで
これまで、法人税の減税は投資段階で税負担を軽くして、企業の投資を促進するために主に行われていました。
投資段階というのは、はじめに工場を整備したり機械を購入したりするときの初期投資が該当します。
初期投資にかかった費用の一部を税額控除、つまり税金から引いていました。
2024年度からどう変わる?
それが2024年度からは、初期投資だけでなく、生産の際の費用についても一部負担を軽減するとのことです。
EVについては、1台生産するあたり40万円税額控除されます(税金が安くなります)。
しかも事業計画の認定から10年間、とかなり長期間に渡り減税が行われます(企業の法人税額に占める控除の割合は40%まで)。
今回、この減税を行う理由として以下のことが考えられます。
まず、環境保護の観点からEVの生産・販売を広げること、国内で安定的な供給を目指す経済安全保障の観点、そして先行するアメリカでのEVの税額控除を見てのEV市場の競争力強化のためだと考えられます。
私たち消費者にメリットは?
では、EVの生産の税額控除、私たち消費者にメリットはあるのでしょうか?
つまり、減税分、EVが安くなるのでしょうか?
これは先行するアメリカのEVの税額控除について見てみると、ヒントになるかもしれません。
先行するアメリカでのEVの税額控除
アメリカではインフレ抑止法(IRA)により、2023年以降にEVを購入する場合、最大7,500ドル(約106万円)所得税の税額控除の対象になります。
「アメリカ国内での最終組み立て」「車両の希望小売価格の上限」「購入者の所得条件」やバッテリー関連の調達が北米でなされるなどが条件で、税額控除の上限は車種によって異なります。
例えば、テスラのModel 3 performance 2022-2023ですと、小売希望価格は55,000ドル(約780万円)で(アメリカでは$4〜5万ドルのEVが売れ筋のようです)、7,500ドル(約106万円)減税されます。
下記の表のCredit Amountが減税額、MSRP Limitがメーカーの希望小売価格、Assembled in N.Americaが組み立てがアメリカ国内で行われているかどうかです。
source: https://www.fueleconomy.gov/feg/tax2023.shtml
日産のリーフやフォルクスワーゲンも対象になっていますね。
日本の国内自動車メーカーは、北米での生産組み立てとEV電池の調達、といった条件が満たされず対象外になっているものがほとんとです。
トヨタ車もこの税額控除の対象外となっているため、北米でのEV生産にかなり巨額の投資を行うことを決めています。
なお、アメリカではこの減税、購入した消費者の所得税から減税される仕組み(federal income tax credit)です。
一方、今回の日本の税制大綱で決まったのは生産にかかる費用を法人税から減税する仕組みです。
そのため、直接、消費者にメリットになるとはいえません。
日本は購入の促進というよりも生産体制の強化の方が強い目的になっていますね。
アメリカでもEVの設備投資や生産強化にさまざまな政策がおこなわれており、需給双方を刺激する形になっています。
日本は今回、生産に伴う費用を低下させ、供給側からアプローチしていこうという感じでしょうか。
特に、アメリカでのEV税制優遇の条件である「アメリカ国内での製造」により、米国のEV電池工場や組み立てに日本のメーカーも巨額の投資を行うことが報じられています。
今回の税制優遇により、国内での生産の促進が大いに期待されます。
また、生産費用の低下により、どれだけ消費者の購入価格に還元されるのか注目していきたいと思います。
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